東京都現代美術館にて
東京都現代美術館で、現在三つの展覧会が開催されていますが、今がチャンス!とばかりに開催初日に見てきました。
最近は写真撮影がオーケーの展示も多いので、ビックリ。印象に残ったものを撮影してきました。
展示すべてを見られる共通券で入場すれば一般1600円と、お得です。おおよそ三時間あれば、すべてをゆっくり見られると思います。美術館の高い天井、広い空間・・・それを体感するだけでも、日常とは隔絶された刺激であり癒やしでもあり。おすすめです。
さて、どれから見ようかな?どの順番で見るのも自由ですが、私は「吉岡徳仁 クリスタライズ」から。
海外でも高い評価を得て、今や日本を代表するデザイナーの一人である吉岡氏の過去最大の個展。吉岡氏の追求する美の世界が集まっている。室内すべてを吉岡ワールドで埋め尽くし、音もすべて吸収してしまうような白とクリスタルの世界。光をクリスタルによるプリズムで分解して壁に色彩を写し出す。花や椅子の枠などに時間をかけて結晶を生じさせるのも、クリスタルにあたる光を分解し写しださせるのも作者の意図だけれど、自然の力が無ければこれらの作品は成立しない。自然への敬意が感じられる作品となっている。おそらく、人気の吉岡氏の個展だから休日はとても混雑してしまうのかもしれないけれど・・この空間を感じるには、なるべく人が少ないときに見たい展覧会です。
次に、「うさぎスマッシュ展」。タイトルからして・・「?」ですが、会場の入り口に掲げられたパネルにあるとおり、”うさぎに誘われて 不思議の国 に迷い込み、さまざまな体験をしたアリスのように、見る人が、視覚だけでない総合的な身体的体験を通して、潜在的な世界の可能性と、当事者としてより能動的に世界と関わるためのヒントを得ることを本展は意図しています。” ということが、タイトルの由来なのでしょう。パンフレットには”世界の捉え方が変わってしまうような驚きの体験は、うさぎを追いかけているうちに別世界に足を踏み入れてしまった不思議の国のアリスに例えることができるでしょう。ウサギは私たちをワンダーランドへ誘い、常識的な見方や固定観念に一打(スマッシュ)を与えるものの象徴です。”とある。
確かに、五感を揺さぶる面白い展示でした。たまたまその前の日に、六本木クロッシングを見ていた私にとって、同じ「?」な作品でも、こちらの展示には大変わかりやすい説明書きがある。それにより作品に入り込みやすい。六本木のほうは、説明書きはあるにはあるけれど、文字は小さいし文章が長いし・・で、あまり役に立たなかった。
中でも印象的だった作品を少し記しておくと・・
ヨーロッパ地図をブランドロゴや宗教で分けてビジュアル化する・・あるいは色で分けてバーコード化する。年表の視覚化。自分にまつわる情報をみたこともない地図にする(性格、人間関係、考え、行動等)。建物の平面図だけを見て、そこにいた人の人生や物語を想像する・・。
そして、「においの記憶」という展示は強烈。東京のにおいのサンプルがたくさん。それを嗅いでみて、何をイメージできるかメモして壁に貼っていく。また、他の広い壁には7人のオトコのにおいがついていて(!)それを嗅いでみる・・実は、この空間。他の展示スペースとは隔離されていてかなり広い。初日に行ったこともあり、その空間に私一人。
さて。その壁のにおいをどう嗅ぐのか?・・ん?壁に鼻を近づけても今ひとつよくわからない。そこで、説明を読んでみれば「こする」とあったので、香り付きシールのような感覚で壁を軽く指でこすってみた。・・うは!強烈に香りが・・・。しかも順番に移動しながら香っていくと、どんどん変化していく。始めは香水系だったのが、なんだろう?なんかまぜこぜのにおいになった・・・しかし、においというのは不思議で嗅覚からいろいろなことをイメージできる。また、思い出すこともある。すっかりその世界に迷い込んだような不思議な気持ちになりそのスペースをあとにするも・・・その後もずっと、なんだか壁のにおいがまとわりついている。よくよく調べてみると、指。指についたまま残っている。洗面所でハンドソープと共に洗い流したのだが、これがまた、全然とれない。・・・う=。昼食の時もなんとなく食欲減退させる香りだったので、今後見に行かれる方は要注意です。
そして、最後に現代美術館の常設展示と企画展。
つくる、つかう、つかまえるーいくつかの彫刻から・・この展示もなかなかおもしろかったです。とくに冨井大裕氏の作品。ゴミ収集所に積んであるゴミ袋とそばにあるコーン。毎日変化する彫刻としてとらえ、毎日毎日写真に納めている。ほ〜!彫刻なんだ、あれは!
また、一見大変ミニマム、シンプルですっきりとしたオブジェが並んでいるので、感心して眺めていたら、素材はどこにでもあるもの。透明のホースの一部を切って裏返しておいてみただけだったり、木の枝を支え合うように置いてみたもの。アルミホイルを丸めたもの、木の削りかす・・空間を大切に取りながら置いていくと見る人をこんなにも唸らせるものになるのか。あるいはだまされているような感覚にもなる。
それを言えば、高柳恵理氏の作品は、ぞうきんを丸めて展示していたり、どこの家にもあるような文庫本とレゴとポストカードを積み重ねて「置物セット」としている。え?・・・と思わせることが現代アートなのだろう。アートはそんなに敷居の高いものじゃない。どこにでもあり、どれでもアートになりうるのだ。思い込みをとっぱらって構成しなおすと、ほらね。・・と見せつけられる驚きがある。
とらわれすぎている頭、疲れている心、何かに迷っている身体を解放しに、ぜひ現代美術館へ足を運んでみてください!
おまけ
美術館からの帰り道。清澄白河駅まで歩いている途中に 鰹節屋さんが。年期の入った箱にも感心したけれど、なにやら香るその感じが今見てきた展覧会に共通するような気分になったのでした。
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