興福寺仏頭展
上野にある東京芸術大学大学美術館で開催中の「国宝 興福寺仏頭展」を見てきました。
11月に入ったとはいえ、寒い日は数えるほどなので木々の葉もまだ緑色です。上野公園の入り口にある大きな銀杏もまだまだ緑。ちょうど昨年の11月下旬に上野を訪れたときには黄色く色づいた銀杏が見事でした。あと20日あまりすると、世の中秋色に染まるのでしょうか。最近は、とにかく暑いか寒いか・・の両極端で、間の季節が非常に短く日本人の細やかな情緒に響く気候が減ってきていますよね。春の穏やかな光、秋の色づきと共に遠くに抜けていく青空、夕焼け・・
冬が去ったと思ったらいきなり灼熱の太陽がギラギラと照り返したり、猛暑を繰り返し豪雨雷雨強風であっという間に散ってしまう葉・・。大丈夫かな地球?
・・・自然に教えてもらった気持ちの動きや、育ててもらった心の豊かさを大切にしていきたいし、こどもたちにもずっと伝えていけるといいのですが。
さて・・前置きが長くなってしまいましたが仏頭展。
奈良の興福寺まで積極的に出かけていかない限り実物を見る機会が無いだろう、とは思いつつ忙しさに紛れて出かけることを惜しんでいたのですが、日曜美術館で展示内容を紹介されていてやはりこれは見に行った方がいいかな・・と思い立ちました。開催期間も、11月いっぱい。考えてみたらもう残りわずかです!思い立ったら吉日!
やっぱり上野、たくさんの人が訪れています。公園散策、動物園、展覧会に向かう多くの人々。芸大美術館にもまた、たくさんの人が訪れていました。年齢層は・・・高い!やっぱり仏像を見ようと思うにはある程度の年齢を重ねないとダメなのかな?
地下三階では、法相宗に関する絵画や書跡を展示していました。複数で訪れている人は、作品群の前でおしゃべりしてしまうんですよね。
「あら、私、この暗さじゃ見えないわ!めがね・・めがねをどこに入れたかしら・・」「すごいわね〜、これ、すてきね〜」「こういうものって絵が好きな人同士じゃないと見に来れないわね。そういえば、この前の公民館での展示、良かったわね〜、公民館はお金がかからないからいいのよ。○○さんの作品、ステキだったわ〜」
・・・あのね、どこか喫茶店でも行ってからしゃべってください。ホントにもう少しマナーを守れないんでしょうかね。
三階に上がると、仏頭と板彫十二神将像や木造十二神将立像が展示されています。これらは、間近でぐるりと回り込んで見ることができます。こんな風にかなりの近距離から直に見ることができるのは迫力満点。制作後何百年という時間を経てまた多くの人々の目に触れる機会があることに驚くばかり。
神将立像のユーモア(現代の人にはそう見えるでしょう)ある表情・・表側から見た怖さとは対照的に背中側の滑らかな曲線が女性的にも見えました。頭には十二支を載せています。
仏像には全く詳しくありませんが、それぞれにポーズ、服装、表情の意味について奥深いものがあるのでしょう。そのような知識と共に鑑賞すると、より面白さが増すことでしょう。
そして中央に置かれた「仏頭」。左右対称の大きな円弧を描いた眉と目。きりりとした口元。十二神将立像とは対照的なシンプルな造りと表情。時を経てこうして向き合っている多くの人々がいるとは・・制作者も想像できたでしょうか・・。
仏頭の奥に、今回の展示で特別陳列されている「深大寺釈迦如来倚像」がありました。仏頭を前にして比較してしまうと、大変小さく見えるのですが、存在感は大きく私にとっては仏頭よりも心に響く像でした。仏像に関しての知識が乏しいので、姿勢やポーズが何を意味しているか、工法技法諸々の時代背景等もわかっていない上で、一つの作品として見ると・・まず、膝頭を開いたリラックスしたポーズ。そしてゆったりとほほえみ包み込むような表情。水面に漂う波紋のような、なめらかに流れる衣紋・・大変美しく、見つめていると自然に心が和み癒やされる仏像でした。
普段は、深大寺で拝観できるようですが遠くガラス越しにしか見られないらしく、このように直接間近でぐるりと!じっくりと!見られるチャンスはほとんど無いのでは?と思います。
やはり、絵画にしろ仏像や彫刻、立体作品諸々・・・印刷物や画像では得られない多くの感情が行き交います。心の会話をするには実物を見ることが大切ですね。
会期終了まであとわずか・・他にも美術展が多く開催されています。是非、秋の上野に足を運んでください!
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