2018/03/07

ミロコマチコ いきものたちの音がきこえる 世田谷文学館

先週金曜日、行くなら今でしょ、とばかりに急遽 世田谷文学館で開催中の展覧会 「ミロコマチコ いきものたちの音がきこえる」を見てきた。


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初めて行く世田谷文学館。
最寄りは芦花公園駅とある。芦花公園と言えば横浜方面へ向かう途中、環八を車で通るときに横目で見る程度で、その界隈を歩いたこともなかったし、車以外の交通機関は? 駅は? ・・・と、全く知らない土地だったが、よく調べてみると 荻窪駅南口から芦花公園行きのバスが出ているという。 ならば、それが一番行きやすい!荻窪までは自転車をとばし、駐輪場に置いてからバスに乗った。


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ここ数年ネット上で何度か見かけて、その画風が気になって目にとまっていた画家のミロコマチコさん。 勢いのある筆のタッチや、デフォルメされた動物たち。色や画面構成、なんだか気になる。これは原画を見てみたい・・・

というのも、アプレットプラスのこどもデザイン造形教室で、今年(2018年戌年)の干支にちなんで、お正月制作は犬の板絵をこどもたちに描いてもらうことにしていた。そのための資料として使う、「犬の写真」や 「画家の描く犬」をさがしていた。
ピカソの一筆描き、ゴーギャンの赤犬。
他にこどもたちに伝わりやすいタッチの画家や作品・・いないかな?
ミロコマチコさんの絵の中には犬はなかったのだが、ただこどもたちにも この筆の勢いや動物の息づかいを感じる描き方、毛並みや模様の表現、動物の形の表現方法などを見てほしいと思い、紹介した。
調べていると、なんと年明けから展覧会が東京で開催されると言うではないか!
これは見るしかない〜。
時間をとれるタイミングがなかなか無かったのだが、とうとう先週金曜日午前中にそのチャンスは訪れた。これは行くしか無い!・・となったわけだ。

そもそも私自身はほとんどミロコマチコさんについて経歴など知らず、ただ画風に惹かれて会場に足を運んだわけだが、作品を見ると・・・
うん、想像通り。

なんというか・・・・子どもの絵に近いのです。勢いとか形の取りようとか。
そこがとてもよい。
こんなことを書いては失礼かもしれないが、たぶん、きっと・・写実的なデッサンは描かない方だと思う。というか、そういう学び方をしてきたら、あんまりこういう表現にはならないのではないかと思う。 

というのは、体の構造がどうだ、とか、体の向きに対して頭の大きさや格好はどうだ、肉付きや立体感はどうだ、とか・・そういうものの見方をしていたらこんな絵は描けない。
そうではなくて、ただ感じたまま。五感で描く、画面がこの大きさだからそこにいれるにはデフォルメもいとわない、画面の中でレイアウトしてデザインして(そこは絵本作家としての使命?) そんな感じの絵なのだ。
描くことが楽しい、描かずにいられない・・息をするのと同時に筆を動かしている、動物から受けるインスピレーションを それこそ息づかいや足音をそのまま筆先に向けて体中を動かして描いている、あらわしている・・・あるいは、動物や植物の姿を借りて自己表現を楽しんでいる、そんな絵。


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こどもたち、特にまだ小学校にあがらない幼いこどもたちの中にも、絵の具で塗るのがただ楽しい、キレイだな、こんな風な色の動物がいたら楽しいな・・
そんな感じで色を塗って仕上げていく子がいる。
ある意味、実は何にも考えてない、ただ感じたままが体から出てくる・・。

オトナになっても、そんな表現ができるミロコマチコさんの絵。
現物を 展示空間の中で ライブで 見ることをおすすめする。
どんな方法であれ、表現するとはどういうことか。
モチーフを画面に描くと同時に、
「私はここにいるよ」
と示す表現・・・
そんなことまでも考えさせる展覧会のような気がした。

入り口付近のショップでは、ミロコマチコグッズがたくさん販売されていたが、印刷物になってしまうと、色もタッチも やはり薄っぺらい。

原画の色。
オイルパステルの真っ黒い画面。グイグイひたすら塗り込んで描いている一畳ほどもあるイノシシ。
こういう作品は、やはり実物を見なくちゃダメだな。


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チケットがコウモリの形のダイカットになっているところや
階段の手すりに、色透明のシールを切り取って貼ってある辺り。
発泡スチロールの大きなオブジェ、プラバンにアクリル絵の具を塗って透明・不透明の変化をつけたモビール。
そこら辺は、雑貨好き・カワイイもの好き の人たちの心をチョコチョコとくすぐる。


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この展覧会は、4/8まで世田谷文学館で開催中。
学校の春休み中もやっているということだから、ぜひ足を運んでみてほしい。
一階で同時期に開催している 「ムットーニのからくり書物」 もおもしろかったですよ。


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一階の喫茶どんぐりも、ランチ600円、コーヒー一杯250円と リーズナブル。
世田谷区の文化施設の充実は、他区住まいからすると羨ましい限り。

〒157-0062 東京都世田谷区南烏山1丁目10−10

開催中の企画展
交通案内


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2017/11/25

ゴッホ展/東京都美術館 と 「子供は誰でも芸術家だ。問題は、大人になっても芸術家でいられるかどうかだ。パブロ・ピカソ」芸大美術館

2017年 11月24日
勤労感謝の日と土曜日に挟まれた金曜日だからか?
それとも、すっきりとした秋晴れだからか?
それとも、上野公園の紅葉がある程度見頃になったからか?
それとも、上野にある美術館の展示が最終日間近だからか?

・・・とにかく・・平日の午前中は いくらなんでも空いているだろうと思い込んでいたのは大間違いで 今日は、やたらに人の多い上野公園。

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いったいどこへ向かってみんな歩いているの? と思ったほどだが、そんな私もその中の一人。目的を持って歩いてる。

私の最初の目的地は、東京都美術館で開催中の『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』
前売り券を持っているからというのもあったのだが、来年1/8まで開催しているのだからまだまだ時間に余裕があったのに なぜ今日を選んだのか?

それは、芸大美術館で開催中の「こどもは芸術家だ。問題は大人になっても芸術家でいられるかどうかだ。パブロピカソ」というなんとも長いタイトルの展覧会を見ることが本命。その期日が12/3とあれば、他の予定も考えると・・今日しか行けるときがないか・・・? ついでに近くで開催中のゴッホ展にも立ち寄ろう。 

そんなわけで 思い立ったら吉日、上野へ向かう。

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都美術館のチケット売り場にはすでに長い行列ができていたが、前売り券を持っているのでそこは楽々スルー。
しかし、どっちにしても会場は混雑。会場内の警備員も、「本日は大変混雑しているので、歩きながらご覧ください。見やすいところから見てください」と連呼している。
列のスキを見つけては、ササッと潜り込み、じっくり観たい絵については近づき、流してもいいなと思える資料や写真などは足早に通り抜ける。

今回のゴッホ展、浮世絵に影響を受けたゴッホの作品と 日本の浮世絵が交互に展示してあり直接鑑賞することができるのだが、双方を比較することで改めて日本の絵画の特徴や色合いを感じることができた。 浮世絵の繊細な無駄のないラインの美しさ!

ゴッホが浮世絵の構図に影響を受けて何枚もトライしている油彩を見ると、そのボリューム感とテクスチャは、浮世絵にまとめられた平坦でシンプルな画面構成とは異なるためにやや違和感を感じ、やはり少々無理があるように私には見えてしまった。遠景が明るく水平、そして手前側に描かれる草。油彩で表現するとただ乱雑に見えてしまうのは私だけ? そしてむしろ、浮世絵であらわされた単純化された線の美しさが際だって見えた。 とはいえ、何枚も何枚も作品にしていくゴッホの情熱、そしてゴッホの描く絵のブルーとイエローの組み合わせは美しい。

私なりに気になったことの防備録としてキーワードをメモ。
クロワゾニズム
サントマリーの道/色彩表現・空の黄色
水夫と恋人/色
アルルの女/輪郭線
娘の肖像/枠どりとサイドに文字
縮緬絵
草むらの中の幹

私以外の人には、わからないであろうメモ。ちょっとした一言を残すことで、私の記憶にはとどめることができる。言葉と共に頭によみがえる映像となって記憶に残すことができる。あるいは、あとから調べてみようと思うこと、制作のヒントなど。

都美術館を出たあと、その足で芸大美術館に向かう途中の風景に、浮世絵に影響された ゴッホの構図を・・秋の葉色と秋晴れの青空に ゴッホの色彩を・・感じてしまった!

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さて、本命の芸大美術館へ。

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なんと、驚いたことに チケット売り場の前にあふれんばかりの人! ・・・・これまで何度かこの美術館に足を運んだことがあるけれど、こんな様子は初めて。 さて、どうやって入ろう?

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行列の一番後ろに立て看板をもった係の人。看板には、ここから80分待ち の文字。
どうやらこれは、26日(日)が最終日の展示 皇室の彩展をみるために並んでいる行列。・・・すごい。

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「3階の展示を見たいのですが・・」 とたずねると、「あ、それは入り口から入っちゃってください」 ・・その一言に ホッと胸をなで下ろし、人混みを横目にササッと入り口を通り抜けエレベーターで三階へ。



そこでは、幼稚園から小学校、中学校、高校、大学(東京芸大)、大学院(東京芸大)の学生たちの美術作品を一同に並べた 「こどもは芸術家だ。問題は大人になっても芸術家でいられるかどうかだ。パブロピカソ」が開催されている。


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↑上から、幼稚園・小学生・中学生の作品たち・・

他にも 後に美術家になって活躍している芸大の先生たちのコドモの頃の作品も展示されている

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↑こちらは、夏に 東京都美術館で展覧会のあった 杉戸 洋氏の 小学生の頃の作品群。



美術の役割。
表現の多様性。
こどもたちが自己表現をのびのびとするために、何もないところから想像をふくらませて形あるものへと創り上げる力を育むために、とても大切な学びとしての美術。
これから先、何でも機械やコンピューターに取って代わられるような人間たちにならないように
人間が本来持っている力、表現する力、創造する力、それらをのびのびとあらわし育むことのできる環境。 それって・・やっぱり大切だよな・・と切に思う。

「本展覧会は我が国における美術教育を再考し、美術教育に新しい流れを生み出す呼び水となることを目指しています」としているので、この展示が今回一回限りではなく、きっとこれから何回も続くことを信じつつ、そしてその目指すところに共感しつつ、展示を鑑賞。

12/3までの展示ということで会期が短いのですが、足を運んでみてはいかがでしょうか。



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帰り道、急に雲行きが怪しくなった。暗い雲の端から降り注ぐ、天からの光をもう少し見たいと思いつつ、夕方の仕事に間に合うように足早に駅に向かった。

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2017/05/07

張り子の うつわ をつくる    その2

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ゴールデンウィークに張り子の器を進めました。

ふちを真っ直ぐ切ったのでは面白くないので、緩やかな花ビラの形になるように切り抜くことに。

器をマスキングで八等分し、各辺に花ビラの形を描いた和紙を貼ります。


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和紙が乾いたらはさみで切ります。

しかし、ボンドで何層にも塗り重ねられ、しかも曲面になってかなり強固な張り子を切るのはなかなか大変。  

ブレードが短く、刃の厚みがある小型の金属鋏でガシガシ切りました。


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高台はセロテープの芯では少々小さかったので6Pチーズのフタの内側にセロテープ芯を切ったもの貼り合わせて作りました。

器と高台の境は紙粘土で成形。


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とりあえずこのような状態になりました。


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こちらはちょっとしたマイブームになりつつあるビーチボール張り子。

スポットライトにつけるカバーにもなり(アトリエに一つつけています)、夜 光を灯すと月のようでなかなかきれいです。

球というのはどこから見ても同じ形に見える究極の形態。

今度アトリエでも球づくりに挑戦する生徒さんがいますが、心引かれる理由は良く分かります。


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2017/04/29

ゴールデンウィークに こどもたちと美術展

いよいよ明日から、2017年のゴールデンウィークが始まります。
美術館へ でかけてはいかがでしょう?
美術館の近くに大きな公園があったり、都会にある美術館なら帰りに買い物や食事もできますよ!

●世田谷美術館 エリックカール展 用賀
●国立新美術館 草間彌生展 六本木/乃木坂
●東京都美術館 バベルの塔展 上野
●江戸東京博物館 戦時下東京のこどもたち 両国
●森美術館 N.Sハルシャ展 六本木
●ちひろ美術館 デンマークの心 イブ・スパング・オルセンの絵本  練馬
●弥生美術館 長沢 節展 根津
●テンキュー宇宙ミュージアム 木星の月・エウロパへの旅 後楽園
●クリエイションギャラリー 渡邊良重展 絵をつくること 銀座
●町田市立国際版画美術館 横尾忠則HANGA JUNGLE
●松屋銀座ミュージアムデータベース シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン展 銀座
●日本科学未来館 ディズニーアート展いのちを吹き込む魔法 江東区青海
●切手の博物館 緑がいっぱい〜癒やしの切手たち〜展 目白
●国立国会図書館国際こども図書館 絵本で知る世界の国々 上野

sunこどもたちと美術館を巡るときのヒントが紹介されています。
子どもたちのミュージアム・デビューを応援
あいうえの

2017/03/19

世田谷美術館 花森安治の仕事 そして 小さな絵展

だいぶ春めいてきた土曜日に、世田谷美術館へ行ってきました。

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・企画展 花森安治の仕事
・区民ギャラリーAにて 樋口トシ江 小さな絵展 

どちらも、どれだけの時間を割いて作品を作り続け、仕事をし続けてきたんだろう・・・と考えさせられる展示でした。

その仕事量たるや・・、ブラック企業だの、有給休暇だの、残業だの、そんなことどうでもいいからとにかくやりたいことをとことん、納得いくまで表現し続けた結果、この量になりましたっていう・・。

そして、好きだからやりたい、やらなくては気が済まない、表現力の圧倒的なパワー。
若い頃は国や時代に翻弄され、戦争をくぐり抜け、生死の境をくぐり抜け、そうして戦争が終わり今度は高度成長期を迎えた日本で とことん表現し続けた人たち。

今、表現しないと伝えないと いたたまれない・・そしてそれが楽しくて寝てられない そんな感じのパワー。

花森安治展でいえば・・ 
暮らしの手帖のロゴは、この絵にはこの書体と表現方法、表紙デザインや絵に合わせて。っていう・・手仕事の世界。そんなことやっていたら時間なんていくらあっても足らないでしょう、と思えるのに 
そうでないとダメなんだ!・・と声が聞こえてきそうなくらいのバリエーションに圧倒。 文章も含めて、莫大な量です。

生活と 仕事と 創作と。
世代の違いだけでは済まされないよなあと・・自分を振り返りました。

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小さな絵展は、本当にかわいらしい絵がたくさんです。愛情があふれています。そして19日(日)までです! ぜひご覧ください。

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2017/03/13

上野動物園と東京都美術館近く・・

先日、東京都美術館へ行く用事があったのですが
用事を済ませたその帰り・・
お隣にある 上野動物園の周りがこんな感じの工事中壁面になっていました。

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工事中なのに、なかなかおもしろいですよね。調べてみたら、3月中旬まで工事期間だそうですから、もうすぐ取り払われるのでしょうか。文字の横に名前と年齢が記されているので
こどもたちに書いてもらった字なのかな。

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パンダのポスト、かわいい!

ところで、こんな掲示も。

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東京都美術館のパパママデー
一回三時間、託児サービス(0〜6才未就学児)。 ゆっくり美術鑑賞や博物館巡りを楽しめそうです。こんなサービスがあったとは!
小さなお子さんをお持ちのパパママさん。ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
そして、お子さんが少し大きくなってきたら、ぜひ一緒に美術館や博物館巡りを!

あいうえの

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春休みは、上野へ!go!

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2017/03/07

小さな絵展 樋口トシ江 世田谷美術館 世田谷区民ギャラリー

ご縁があって、この展覧会の準備をちょこっとだけお手伝いさせていただいているのですが・・

先日、展示予定の原画を見せていただく機会に恵まれ、トシ江さんの愛があふれる作品の数々に温かな気持ちになり みなさんにも ぜひこの展覧会をご紹介したいと思いました。
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60年ずっと欠かさず描かれている年賀状のイラスト、お友だちやご家族にプレゼントされている記念日のイラスト、こどもたちを描いたイラスト、エプロンやコドモ服洋裁の本のために描かれたイラスト、そして60年代70年代のファッションイラストレーション等々、作品数も多く見応え充分! 

鉛筆やインクペン、筆のタッチ・・ぬくもりのある手描き線・・・習作も多数展示される予定ですので、ファッションイラストレーションを勉強されている方やイラストレーターをされている方にもぜひご覧いただきたいと思います。

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樋口トシ江さんは、本当に笑顔が生き生きとされていて、展示前のお忙しい時期なのにとてもお元気で、この展覧会に向けて現在ラストスパートでバリバリ準備中!

普段は、シャンソンにフランス語、太極拳・モダンダンスに通われているそうで(!) 趣味に運動にお仕事や創作活動にお忙しくお過ごしだそうです。(それだけでも、尊敬の眼差し・・shine

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作品にまつわるエピソード等を伺っていると、思わず引き込まれてしまいます。絵を通してつながるファミリーやお友だちのお話、ファッションイラストを夜中に何点も仕上げるお話、3人のお子様を育てながら、ずっとお仕事を続けていらしたお話・・とても刺激的で、そして温かで。 心の中にタップリとパワーをいただきました。 私も展覧会をとても楽しみにしています。 

ちょうど世田谷美術館では、「暮らしの手帖」編集長をされていた 花森安治さんの展覧会『花森安治の仕事』も開催中。
みなさんも、ぜひ、世田谷美術館に足を運んでみてください!



小さな絵展
 樋口トシ江 

世田谷美術館 区民ギャラリーAにて
2017年3月15日(水)~19日(日)

◆樋口トシ江さんプロフィール
東京生まれ ドレスメーカー女学院デザイナー科  1954年卒業。
同学院のデザイナー科助手、杉野女子大学講師を経て、ドレスメーカー女学院デザインアート科教授、繊維・既製服会社顧問。
新聞家庭欄、NHK婦人百科、ファッション誌などでもご活躍でした。

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2017/02/26

被写界深度   Depth of field

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被写界深度という言葉を知っていますか?

上の写真は同じ景色を同じカメラ、同じレンズで撮っています。

左側の写真は手前の多肉植物にピント(焦点)が合って背景がぼけています。 右側の写真は多肉植物だけでなく全体にピントが合っています。

このように被写体のピントが合う奥行きの幅を被写界深度と呼びます。 被写界深度はピントの合う幅が狭い場合を「浅い」、ピントの合う幅が広い場合を「深い」と表現します。

では被写界深度はどのようにすると変わるでしょうか。

「絞り」という光の通る穴の大きさを変える部品で変化させます。

絞りは人間の目の瞳孔とほぼ同じはたらきをします。 黒目のまん中に瞳孔という光の通す穴がありますが、この穴は明るいところに行くと小さくなり、暗いところに行くと大きくなりますね。 絞りはこの穴の開け閉めを機械的にする部品なのです。

穴が小さければ被写界深度の深い、全体にピントの合った像が、大きければ被写界深度の浅い、ある部分にピントが合った像が結ばれます。

被写界深度が違うと景色の印象はかなり違ってきます。  


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先ほど絞りを人間の目にたとえましたが、人間の目は記録機能がないだけで未だ現代のカメラが追いつけないほどの高性能です。 

ピントの合う早さ、明るい・暗いへの対応力、解像度…。 カメラでは意図的に操作しなくては全体にピントが合いすぎてゴチャゴチャとうるさい景色に写ってしまう状況でも人間の目は意識せずに見たいもの・見たい場所に焦点が合わせることができます。

これは同じ景色を見ても、見る人によって(そのひとの興味によって)違った見え方をするということでもあります。

たとえば夜桜見物に行ったとします。ある人は光に照らされた桜の木のぼんやり光る姿が映ります。

ある人は桜の花びらが散っている瞬間をとらえているかも知れません。

ある人は薄桃色の背景に愉快に宴会をしている人たちを見ています。

見た景色をそのまま定着することは出来きませんが、恐らく10人同じ景色を見ても10人とも違った絵が目に映っていることでしょう。

こうした違いは自分の目で世界を見ているからこそ生まれる違いです。

しかし、最近はどこにいてもだれといてもスマホやタブレットの端末ばかり見ている人ばかりです。

端末の中にはたくさんの情報があるかも知れません。ただ、そうした平面的な世界は私たちの目の焦点を様々に動かしてはくれません。

誰かが撮った写真や情報を目から端末までの距離に焦点を合わせ、皆が同じ被写界深度でモノを見ているだけです。 

たくさんの情報を簡単に手に入れられるということはとても便利なことですが、その分自分らしくモノを見ていますか? 自分の被写界深度で景色を見ていますか?

遊びに行ったら思いっきり遊びましょう。 誰かと会うなら顔を見て楽しく話しましょう。 食事をするなら五感をふるに活かして美味しく頂きましょう。 

様々な被写界深度で生活すること。 

手元で様々なことが完結できる時代だからこそ忘れてはいけないことだと思います。

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<補足> 手元のスマホを見る時間が長いと対象物に焦点を合わせる「ピント機能」が鍛えられず視力低下の原因となります。 またLEDから発せられるブルーライトは目に悪影響があると言われています。 暗いところでのスマホ利用は瞳孔を緊張させ疲労の原因となります。 歩きスマホは危険です。


2017/02/20

張り子の うつわ をつくる

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少し大きめの張り子の<うつわ>を作っています。

造形教室ではふくらませた風船に細かくちぎった新聞紙を水で薄めたボンド水で貼り付け、小物入れやうつわを作る課題があります。

ある程度の強度がでるまで何層も新聞紙を貼り合わせる必要があり、時間はかかりますが出来あがる作品の完成度はかなり高いものになります。

いつも子供たちの作品をみては「いつかうつわをたくさん作って<うつわ展>がひらけたらいいなあ」と思っています。

ただ風船がベースだと形にバリエーションが出にくい。 平べったいうつわ、のっぽなうつわ、花のようなうつわ…色々出来ればいいのに。

考えていても良いアイディアがわかないため、とりあえず自分で一つ作ってみることにしました。

新聞で大まかな形を作り、張り子で表面を整えて作った型に新聞の切れっ端を張っています。

ところで、形に紙を貼って作るこの張り子、ちょっと材料は違うのですが、唐代の技法「夾紵(きょうちょ)」とやっていることは同じなのです。

夾紵は日本では乾漆ともよばれますが、型に漆を接着剤に麻布を何層も貼り合わせて中空の形を作る方法です。 漆は樹脂ですから固まると大変強度ある。しかも耐水性がたかく中空なので出来あがった作品は軽いと良いことばかり。難点はコストがかかるということでしょうか。

さて、この夾紵=乾漆は一体何に利用されたでしょうか。

仏像です。

ほぼ奈良時代天平文化の頃に限られるのですが、柔らかな素材のため金銅仏や木彫仏にはない実に写実的な雰囲気をもっているのが特長です。

皆さんご存知の阿修羅像も張り子なのですよ。

張り子、いろいろと面白いことができそうです。

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Dick Bruna 追悼

2月16日に、ミッフィーの絵本作家として有名な ディックブルーナさんが亡くなった。

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幼い頃、正方形に近い比率の小さな絵本、鮮やかな色使い、シンプルなイラスト、「すなおに可愛い」 うさこちゃん の絵本が、
いとこの家にはあって、我が家にはなぜか なかったので、とても羨ましかった。

ぐりとぐらシリーズ、いやいやえん、かえるのエルタとか、そらいろのたねとか・・中川李枝子さんの絵本はたくさんあったのに、ディックブルーナの絵本はなかった。たぶん、親の好みもあったのだろう。
もちろん、中川李枝子さんのシリーズも楽しくて大好きだった。
でも、あの手描きイラストのタッチとはまたちがう、シンプルで動きがなくて、でもふしぎとものすごく可愛いイラストに『外国』のおしゃれさ、日本人には無いセンスを感じたのである。

大学を出た後 キャラクター雑貨の企画制作をする会社に勤めていた私は、ミッフィーという他社キャラクターとして 再び うさこちゃんに出会った。 キャラクター雑貨になると、かつて感じたようなあこがれはほとんどなくなってしまったし、見慣れてしまえばしまうほど、その価値は下がってしまうようにも感じたわけだが、会社を退職した後、今度は青山ブックセンターだったか?洋書のセールで ブルーナの作品集と出会う。

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ブルーナの作品は、うさこちゃんだけじゃない。
そんなことはわかっていたけど。

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もう、なんともいえない。言葉にはできない
絶妙なセンス! 
手描きのラインと、アルファベット、
シンプルな構成。
色使い。

・・そして、サイン!  
ここしかない・・という場所にレイアウトされたサイン!

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デザインは、理屈 というが 
ここに理屈はあるんだろうか?
これはセンスなのか?

16日に亡くなったと訃報を聞き、本棚に置いてあった ブルーナの作品集を再び眺めてみた。

絶対に、コンピューターでは作れないだろう、このライン! 文字、イラスト・・
改めて、手から生み出されるデザインに敬服。

もう7,8年前になるかもしれないが、かつて 阿佐ヶ谷に向かう途中の旧中杉通り沿いに 虹色雑貨店という店があった。そこで売られていた中古のペーパーバック。 ブルーナデザインの表紙に魅せられて、購入。 未だにビニールカバーを外せないまま、飾っている。

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