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2017年2月

2017/02/26

被写界深度   Depth of field

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被写界深度という言葉を知っていますか?

上の写真は同じ景色を同じカメラ、同じレンズで撮っています。

左側の写真は手前の多肉植物にピント(焦点)が合って背景がぼけています。 右側の写真は多肉植物だけでなく全体にピントが合っています。

このように被写体のピントが合う奥行きの幅を被写界深度と呼びます。 被写界深度はピントの合う幅が狭い場合を「浅い」、ピントの合う幅が広い場合を「深い」と表現します。

では被写界深度はどのようにすると変わるでしょうか。

「絞り」という光の通る穴の大きさを変える部品で変化させます。

絞りは人間の目の瞳孔とほぼ同じはたらきをします。 黒目のまん中に瞳孔という光の通す穴がありますが、この穴は明るいところに行くと小さくなり、暗いところに行くと大きくなりますね。 絞りはこの穴の開け閉めを機械的にする部品なのです。

穴が小さければ被写界深度の深い、全体にピントの合った像が、大きければ被写界深度の浅い、ある部分にピントが合った像が結ばれます。

被写界深度が違うと景色の印象はかなり違ってきます。  


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先ほど絞りを人間の目にたとえましたが、人間の目は記録機能がないだけで未だ現代のカメラが追いつけないほどの高性能です。 

ピントの合う早さ、明るい・暗いへの対応力、解像度…。 カメラでは意図的に操作しなくては全体にピントが合いすぎてゴチャゴチャとうるさい景色に写ってしまう状況でも人間の目は意識せずに見たいもの・見たい場所に焦点が合わせることができます。

これは同じ景色を見ても、見る人によって(そのひとの興味によって)違った見え方をするということでもあります。

たとえば夜桜見物に行ったとします。ある人は光に照らされた桜の木のぼんやり光る姿が映ります。

ある人は桜の花びらが散っている瞬間をとらえているかも知れません。

ある人は薄桃色の背景に愉快に宴会をしている人たちを見ています。

見た景色をそのまま定着することは出来きませんが、恐らく10人同じ景色を見ても10人とも違った絵が目に映っていることでしょう。

こうした違いは自分の目で世界を見ているからこそ生まれる違いです。

しかし、最近はどこにいてもだれといてもスマホやタブレットの端末ばかり見ている人ばかりです。

端末の中にはたくさんの情報があるかも知れません。ただ、そうした平面的な世界は私たちの目の焦点を様々に動かしてはくれません。

誰かが撮った写真や情報を目から端末までの距離に焦点を合わせ、皆が同じ被写界深度でモノを見ているだけです。 

たくさんの情報を簡単に手に入れられるということはとても便利なことですが、その分自分らしくモノを見ていますか? 自分の被写界深度で景色を見ていますか?

遊びに行ったら思いっきり遊びましょう。 誰かと会うなら顔を見て楽しく話しましょう。 食事をするなら五感をふるに活かして美味しく頂きましょう。 

様々な被写界深度で生活すること。 

手元で様々なことが完結できる時代だからこそ忘れてはいけないことだと思います。

(H)

<補足> 手元のスマホを見る時間が長いと対象物に焦点を合わせる「ピント機能」が鍛えられず視力低下の原因となります。 またLEDから発せられるブルーライトは目に悪影響があると言われています。 暗いところでのスマホ利用は瞳孔を緊張させ疲労の原因となります。 歩きスマホは危険です。


2017/02/20

張り子の うつわ をつくる

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少し大きめの張り子の<うつわ>を作っています。

造形教室ではふくらませた風船に細かくちぎった新聞紙を水で薄めたボンド水で貼り付け、小物入れやうつわを作る課題があります。

ある程度の強度がでるまで何層も新聞紙を貼り合わせる必要があり、時間はかかりますが出来あがる作品の完成度はかなり高いものになります。

いつも子供たちの作品をみては「いつかうつわをたくさん作って<うつわ展>がひらけたらいいなあ」と思っています。

ただ風船がベースだと形にバリエーションが出にくい。 平べったいうつわ、のっぽなうつわ、花のようなうつわ…色々出来ればいいのに。

考えていても良いアイディアがわかないため、とりあえず自分で一つ作ってみることにしました。

新聞で大まかな形を作り、張り子で表面を整えて作った型に新聞の切れっ端を張っています。

ところで、形に紙を貼って作るこの張り子、ちょっと材料は違うのですが、唐代の技法「夾紵(きょうちょ)」とやっていることは同じなのです。

夾紵は日本では乾漆ともよばれますが、型に漆を接着剤に麻布を何層も貼り合わせて中空の形を作る方法です。 漆は樹脂ですから固まると大変強度ある。しかも耐水性がたかく中空なので出来あがった作品は軽いと良いことばかり。難点はコストがかかるということでしょうか。

さて、この夾紵=乾漆は一体何に利用されたでしょうか。

仏像です。

ほぼ奈良時代天平文化の頃に限られるのですが、柔らかな素材のため金銅仏や木彫仏にはない実に写実的な雰囲気をもっているのが特長です。

皆さんご存知の阿修羅像も張り子なのですよ。

張り子、いろいろと面白いことができそうです。

(H)

Dick Bruna 追悼

2月16日に、ミッフィーの絵本作家として有名な ディックブルーナさんが亡くなった。

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幼い頃、正方形に近い比率の小さな絵本、鮮やかな色使い、シンプルなイラスト、「すなおに可愛い」 うさこちゃん の絵本が、
いとこの家にはあって、我が家にはなぜか なかったので、とても羨ましかった。

ぐりとぐらシリーズ、いやいやえん、かえるのエルタとか、そらいろのたねとか・・中川李枝子さんの絵本はたくさんあったのに、ディックブルーナの絵本はなかった。たぶん、親の好みもあったのだろう。
もちろん、中川李枝子さんのシリーズも楽しくて大好きだった。
でも、あの手描きイラストのタッチとはまたちがう、シンプルで動きがなくて、でもふしぎとものすごく可愛いイラストに『外国』のおしゃれさ、日本人には無いセンスを感じたのである。

大学を出た後 キャラクター雑貨の企画制作をする会社に勤めていた私は、ミッフィーという他社キャラクターとして 再び うさこちゃんに出会った。 キャラクター雑貨になると、かつて感じたようなあこがれはほとんどなくなってしまったし、見慣れてしまえばしまうほど、その価値は下がってしまうようにも感じたわけだが、会社を退職した後、今度は青山ブックセンターだったか?洋書のセールで ブルーナの作品集と出会う。

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ブルーナの作品は、うさこちゃんだけじゃない。
そんなことはわかっていたけど。

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もう、なんともいえない。言葉にはできない
絶妙なセンス! 
手描きのラインと、アルファベット、
シンプルな構成。
色使い。

・・そして、サイン!  
ここしかない・・という場所にレイアウトされたサイン!

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デザインは、理屈 というが 
ここに理屈はあるんだろうか?
これはセンスなのか?

16日に亡くなったと訃報を聞き、本棚に置いてあった ブルーナの作品集を再び眺めてみた。

絶対に、コンピューターでは作れないだろう、このライン! 文字、イラスト・・
改めて、手から生み出されるデザインに敬服。

もう7,8年前になるかもしれないが、かつて 阿佐ヶ谷に向かう途中の旧中杉通り沿いに 虹色雑貨店という店があった。そこで売られていた中古のペーパーバック。 ブルーナデザインの表紙に魅せられて、購入。 未だにビニールカバーを外せないまま、飾っている。

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(m)

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